今年公募開始される補助金の中で、「ものづくり補助金」と「事業再構築補助金」では、新たに「グリーン枠」「グリーン成長枠」が新設されるようです。(https://mirasapo-plus.go.jp/infomation/17266/)
まだ公募要領は発表されていませんので具体的な内容はわかりませんが、気になったので調べてみました。
<目次>
1.背景・概要
2020年10月、菅元内閣総理大臣が2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、それを受けて2020年12月25日、経済産業省が中心となり、グリーン成長戦略を策定、成長戦略会議で報告しました。
2. 主な内容
14の重要分野ごとに、高い目標を掲げた上で現状の課題と今後の取り組みを明記し、予算、税、規制改革、標準化、国際連携など、あらゆる政策を盛り込んだ実行計画を策定しています。(経済産業省HP中段https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012.html)
3. 14の分野とは
事業再構築補助金第6回公募予定のチラシには以下のように記載があります。
“研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者に対する支援“
では14分野とその課題とは何でしょうか。「令和2年12月 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 資料1」には以下のように記載があります。(一部抜粋)
分野 | 課題 |
①洋上風力産業 | ◎国内市場の創出、国内サプライチェーン形成、次世代技術(浮体)の開発、マーケット獲得 |
②燃料アンモニア産業 |
◎石炭火力への混焼時にNOxの発生を抑制するバーナーの技術開発実施 ◎国際的なサプライチェーンの構築 |
③水素産業 |
◎水素発電タービンの商用化 ◎FCトラック商用化 ◎大量かつ安価な水素の調達 ◎水素運搬船の大型化 ◎水電解装置の大型化 |
④原子力産業 | ◎多様な原子力技術のイノベーション加速化 |
⑤自動車・蓄電池産業 | ◎EV等の低価格化・インフラ整備
◎合成燃料の低価格化と製造技術・体制の確立 ◎蓄電池の大量生産・性能向上 |
⑥半導体・情報通信産業 | ◎デジタル化によるエネルギー需要の効率化・省CO2化
◎デジタル機器・産業の省エネ・グリーン化 |
⑦船舶産業 | ◎カーボンフリーな代替燃料への転換
◎LNG燃料船の高効率化 ◎省エネ・省CO2排出船舶の導入・普及を促進する国際枠組の整備 |
⑧物流・人流・土木インフラ産業 | ◎カーボンニュートラルポートの形成
◎スマート交通の導入、自転車移動の導入促進 ◎グリーン物流の推進、交通ネットワーク・拠点・輸送の効率化・低炭素化の推進 |
⑨食料・農林水産業 | ◎スマート農林水産業等の実装の加速化によるゼロエミッション化
◎農畜産業由来の温室効果ガスの削減 ◎農地・森林・海洋における炭素の長期・大量貯蔵等、吸収源の取り組みを強力に推進 |
⑩航空機産業 | ◎装備品電動化に必要な航空機向け電池、モーター、ジェネレーター、インバータについて航空機向けに性能向上
◎日本製炭素繊維複合材のシェア拡大 ◎水素航空機について、軽量かつ安全性を担保した水素貯蔵タンク、水素燃焼に適したエンジン開発、水素供給に関するインフラ、サプライチェーンの検討 ◎ジェット燃料について、触媒反応の制御技術の確立 ◎合成燃料について、低価格化、製造技術・体制の確立 |
⑪カーボンリサイクル産業 | ◎CO2を吸収して造るコンクリートの販路拡大・コスト低減
◎藻類の培養によるバイオ燃料の大規模実証を通じたコスト低減、供給拡大 ◎変換効率の高い光触媒の開発を加速、実用化 ◎排気中のCO2の分離回収技術の低コスト化 |
⑫住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業 | ◎省エネ住宅導入促進
◎木造建築物の普及拡大 ◎次世代型太陽電池について、現行の太陽電池を超える性能の実現、ビル壁面等に導入 |
⑬資源循環関連産業 | ◎バイオマス素材の高機能化、用途拡大、低コスト化に向けた技術開発
◎リサイクル技術の開発、高度化、回収ルートの最適化 ◎焼却施設排ガス等の活用 ◎廃棄物発電の技術開発 ◎熱利用について、蓄熱、輸送技術の向上、コスト低減 ◎バイオガス化技術の向上 |
⑭ライフスタイル関連産業 | ◎行動科学やAIに基づいて一人ひとりに合ったエコで快適なライフスタイルを提案して暮らしをサポートするより高度なシステム技術の開発、実装
◎EVのカーシェアリング、バッテリー交換式EVとバッテリーステーション等のビジネスモデルの確立と全国への普及 ◎気候変動予測情報の高精度化 |
つまり、次回のものづくり補助金や事業再構築補助金のグリーン枠、グリーン成長枠では、これら14分野の課題を解決するような製品開発、サービスの提供等の取り組みに対して補助金が交付されるものと考えられます。
例えば以下のような事業が考えられます。
(例)(既存事業)レンタカー事業 ⇒ (新事業)EVのカーシェアリング事業
4.まとめ
今回はグリーン成長戦略について簡単に解説しました。
今後、脱炭素化を促進するための様々な施策が出されそうですね。そのうちの一つがものづくり補助金や事業再構築補助金(グリーン枠、グリーン成長枠)です。
当然のことですが、補助金のための事業ではなく、あくまでも事業のための補助金でなければなりません。
グリーン枠、グリーン成長枠についても脱炭素化に向けた製品開発やサービス提供を念頭に置いた取り組みをされる場合には活用できるかもしれません。
いずれにしても今後、産業はカーボンニュートラルに向けた世界に向けて進んでいくことになりそうです。